土方さんは私の肩を抱き寄せ、慣れた手つきで自撮りをした。

 すぐ近くに土方さんの顔がある。心臓破裂しそうになった私は、また手で顔を隠してしまう。

「どうして隠す」

「無理です。恥ずかしい。私みたいなのが、土方さんの隣に写るなんて、ダメです」

「美晴」

 土方さんがスマホを置いた。空いた手で、私の顔を隠す手に指を絡ませ、膝の上に置く。

「この唐変木。なにが『私みたいなの』だ。こんなにかわいいくせして」

 怒ったような顔でにらまれ、呆気にとられる。怒られる理由がわからない私に、土方さんは囁くように言った。

「俺が惚れたおなごを、本人が侮辱するな」

「惚、れ……?」

 なにが起きたのかいまいち状況を理解できない私に、彼はもういちど唇を寄せた。

「ま、ま、また! もう、やだ! からかわないでください!」

 彼の腕の中から逃れようとするが、強い力で阻まれる。

「いいか、美晴。俺はこの世界で、お前だけが心の支えなんだ。最初に施してくれた朝餉が、どれだけ俺の心を救ってくれたか、お前は知らないだろう」

 ささやかれるたびに胸が震える。