「いいじゃねえか。俺は醜いものをわざわざ撮ったりはしねえ」
土方さんは何度もシャッターを押しているようだ。音が途切れた瞬間、私は食べかけのサンドイッチを置いた。
「かわいいから、残したいと思うんだ」
優しく柔らかく笑う土方さんは、京都で私に怒鳴った人とは、まるで別人のようだった。
そんなこと言われたら、また泣きそうになっちゃうよ。
「あんまり泣かせないでください」
「泣いてもいい。俺には遠慮なく甘えろ。泣いて気が済んだら、笑っていてほしい。その方がかわいいから」
「だから、そういうセリフを、簡単に吐かないでください」
土方さんが優しければ優しいほど、つらくなる。
彼は大人だからキスだって、甘いセリフだって、慣れているだろう。私のことを特別に思っていなくたって、優しくできる。
でも私はそうじゃない。いつだって全力で、本気で、土方さんのことが好きなのだ。
冗談なら、これ以上私の心に触れないでほしい。その度にますます好きになってしまうから。
「ほどほどにしてくれないと、本気にしますよ」
「ああ、かまわねえ。本気にしろ。ほら、今度は一緒に撮るんだ」