意識した途端に、さらに鼓動の速さが増す。私たちも、周りから見たらカップルに見えるのかな。
「そろそろ腹が減らないか」
声をかけられ、我に返った。
「そうですね。園内にレストランやカフェがあったはず。どこがいいかな」
入り口でもらっておいた園内マップを広げると、土方さんが首を横に振った。
「そこに大きな原っぱがあるだろう」
土方さんが指さす先には、見事な芝生が広がっていた。暦の上ではもう秋だというのに、いまだに緑がぽつぽつと残っている。あちこちで、レジャーシートを引いて寝転ぶカップルや、写真を撮っている若い女の子たちがいた。
「もしや写真や動画を撮りたいんでしょう。映えそうですものね」
芝生に寝転がり、リラックスするイケメン。黄色いイチョウの葉を持たせたら完璧かも。
ウキウキする私に、土方さんはまた首を振って見せた。
「それもいいが、まず飯だ」
「はい? あ、売店で買ってここで食べるんですね」
「違う。来い」
土方さんは木陰の、暑くもなく寒くもないちょうどいい場所を見つけ、持ってきたトートバッグから小さめのレジャーシートを出し、芝生の上に敷いた。