どうやら、厳しい規則を作った張本人が土方さんらしい。そりゃあ、なんて言うか……ね。校長先生が禁止されているスカート丈で歩くようなものだね。違うか。
「……仕方ねえ。潔く切腹しよう。おい、脇差をよこせ。誰かに介錯を頼む」
土方さんは床に正座し、脇差を要求するように片手を出した。
介錯……ああ、時代劇で切腹する人の首を刎ねることね。って、そんなのできる人、現代にはいません!
「ここには介錯できる人はいません」
「むう、そうか。では迷惑をかけるがひとりでやるしかあるまい」
土方さんはスウェットをめくってお腹を出した。すると引き締まった腹筋から、ぐうと細い音が鳴った。
「お腹空いたんですね」
「空耳だろう」
土方さんはすまし顔をするが、もう一度腹の虫の音が追いかけてきた。
「……あのね土方さん、今の時代に新選組はないんです。だから、隊規を守る必要もない。熱のあるあなたが今するべきことは、栄養をとって休むことです」
私はドアの前に立った。
「どこへ行く」
「食事を持ってきます」
部屋の中にロープなど自殺の手助けになるようなものがないか確認し、私は廊下に出た。食堂へ行く間に、スマホで調べ物をする。