浅黒い肌に、大きな目。すらりと伸びた手足。黙っていれば芸能人みたいだけど、口を開けばかわいくないことばかり。私の方が年上なのに。

「自然災害を侮ると怖いんだよ」

「って言いつつ、この辺でそんなにすごい被害があったこと、ないじゃない。いつも準備するけど、結局無駄になるんだから」

 たしかに、いつも「戦後最大級」と天気予報に脅され、ポリタンクに水を溜めたり、窓ガラスを補強したりするけど、この地方はさほど大きな被害にあったことがない。それはとてもいいことなのだけど。

「でも、備えあれば憂いなしって……」

 私はこの寮を管理する義務がある。が、寮生の部屋にはプライバシー保護の観点で、緊急事態以外は勝手に入らないように決まっているのだ。

 だから自分の部屋のガラスは自分で守ってほしい。なにかあってからでは遅い。怪我でもしたら大変だ。

「はいはい。美晴は心配症だね。俺からみんなに言っておくよ」

「ありがとう!」

 沖田くんは軽く微笑み、テープ等が入った大きなダンボールをひょいと抱え、寮生の居室の方へ歩いていった。

 普段冗談ばかり言っていて、寮生に好かれている沖田くん。彼が話せば、みんな聞いてくれるかも。