鬼上司の土方さんとひとつ屋根の下


 入園料を払い中に入ると、そこはまるで別世界のようだった。見渡す限り緑、緑、緑。自然しかない。まるで自然の森のような、人工の庭園。

「俺がいた時代は、どこもこんなものだった。いや、これほど整備されてはいなかったか。ガキの頃過ごした場所はつまらなかったぜ。河原、田んぼ、畑ばっかりだったからな」

 土方さんの実家は、そのあたり一帯で一番裕福な農家だったらしい。ただ彼は末っ子だったので、家を継ぐことはなかった。

「どんなことをして遊んでいたんですか?」

「虫を捕まえたりとか、木の枝でチャンバラごっこしたりとか」

「元気な子だったんですね」

 今の子みたいにテレビやゲームがなかったから、外遊びが多かったのかもしれない。

 五歳くらいの土方さんが、近所の子供たちと無邪気に駆け回る姿を想像すると、頬が緩んだ。

「こんなに空気のいい場所で毎日を過ごせるとしたら、昔の子はいいですね。今の子は恵まれているけど、大事なものを失くしている気がして」

 SNSでのいじめ、経済格差、ゲーム依存、親のネグレクト……現代の問題は数えきれない。