鬼上司の土方さんとひとつ屋根の下

 今日は俺が行先を決める。

 そう言った土方さんの目的地は、大きな公園だった。もともとは皇室の庭だった場所で、戦後に一般に開放されるようになった。

「ベタなデートスポットですねえ」

 と言っても、デートなんてしたことないけど。デートの行先を検索するとまず出てくるので、きっとベタなんだろう。

「さっきも言っていたが、出干支とはなんだ。十二支からはみ出た猫か」
「違います。仲のいい男女が、ふたりきりで出かけることです」

 ちょっと濁して言っておいた。女子同士でも、ふざけてデートとか言うものね。これでいいのよ。

「ふむ、俺たちにぴったりだな」

 そうかな。

「どこかのんびりできる場所をと左之に聞いたら、ここにしておけというから」

 土方さんは少し照れたような顔で、咳ばらいをした。

 なるほど、沖田くんに聞くと、誰と行くんだとか、色々と追及されそうだ。それに比べて原田先生は大人だし、現代女性の扱いに慣れているだろうし、安全だと思ったのだろう。

「私ものんびりしたいと思っていました」

 この前の修学旅行も楽しかったけど、今は土方さんとの時間をゆっくり過ごしたい。