土曜日。私は約束の時間に部屋の外に出た。

 同じタイミングで、隣のドアから土方さんが出てきた。顔を見合わせて噴き出す。

「よし、行くか」

 並んで廊下を歩いていると、すぐに寮生に見つかってしまった。

「あっ、おふたりとも……もしや、デートですか?」

 いつぞや進路で悩んでいた湊くんだ。彼は原田先生が寮に来てから、みるみる表情が明るくなった。今も私たちをからかうような、余裕のある顔をしている。

「出干支とはなんだ」

「あ、あとで説明します」

「ふむ。ときに湊、この前の試験でいい成績を残したそうじゃねえか。左之が言ってたぜ」

 土方さんがニッと笑いかけると、湊くんの顔がますます輝いた。

「はい。おふたりのおかげです」

「俺らはなにもしてねえよ。お前が頑張ったんだろ。よくやったな」

 湊くんは照れ臭そうに笑った。

「いえ、あのとき話を聞いてもらえなかったら、きっと途中で心が折れてました。土方さんの話を聞いたら、僕にも可能性があるような気がして、ここまで頑張れたんです」

 隣で聞いている私の方が、じいんと胸が熱くなってしまった。土方さんの生き方は、現代でも人に勇気を与えることができるのか。