土方さんと二人きりになり、部屋に気まずい沈黙が落ちる。

「……総司は前世の記憶に強く影響されているんだな。自分が覚えている新選組のままであってほしいから、俺に幕末に帰ってほしい。そういうことだろう。美晴が気にすることはねえ」

「ありがとうございます……。でも沖田くんって、さらっと核心を突いてくることありますよね」

 聞いている大人がぎくりとすることを平気で言えてしまうのは、ある意味才能だと思う。

「あいつは昔から突き技が得意だからな」

「核心を突く」とかけたのか。私は遅れて愛想笑いをした。

「でも土方さん、本当に大丈夫ですか。つらいときはいつでも私を頼ってください」

 もともと、土方さんがいなくてもこの寮はなんとか仕事を回していた。少し休んでもらっても問題ないだろう。

「男前なこと言うじゃねえか。まるで武士だ」

「ええっ? 私が?」

「俺はだいぶ、お前に救われているよ」

 大きな手が、額にかかっていた前髪を避けて顔を見つめる。それだけで私の胸が熱くなることを、きっと彼は知らない。

「美晴がいるなら、この世界に腰を据えて生きていくのもいいかもな」

 彼の低い声が聞こえた。聞き違いかと思った。

 私はあなたに、なにもしてあげられない。なのにどうしてそんなことを言ってくれるの?

 私は目を伏せた。赤い顔をしているのが自分でわかる。恥ずかしくて、目を合わせられない。

「なあ美晴、またふたりで出かけよう。次の土曜、休みだよな?」

「……はい」

 返事をする声が、かすかに震えた。