「どうやって帰るつもりですか? 今の日本では、刀を持って歩くことが禁止されているんです。すぐに警察に捕まって、拘留されますよ」

 今にも走り出しそうな土方さんの手を握ってハッとした。まだ熱があるのだろう。信じられないくらい熱い。

「くそ……!」

 彼は突然床に膝をついた。発熱で体がつらいのかと思いきや、彼は予想外の言葉を口にした。

「このままだと、帰れたとしても切腹だ」

「はい?」

「新選組の鉄の掟、局中法度。一、隊を脱するを許さず」

 ええとつまり? 脱退するなってこと? アイドルだったら「卒業して別の事務所に行くなよ」とか、そういう意味?

「大丈夫ですよ。脱退するわけじゃないし」

 励まそうと肩を叩くと、即座に手を払われた。ひどい。

「このぼんくら! うちの隊じゃな、報告なしの外泊をしただけで切腹なんだよ!」

 怖い顔で怒鳴られて、身が縮む。

 ええ~、厳しい。うちの寮でも報告なしの外泊なんてもってのほかだけど。切腹はないわ。せいぜい寮長のお説教くらい。

「でも土方さん、副長なんですよね。偉いんでしょ。なんとかなりますよ」

「その掟を作った張本人が隊規を破って平気な顔をしていられるか。隊の結束が乱れるだろうが」