修学旅行から帰ってから、四日後。

「土方さん、眠れていないんでしょう? 大丈夫ですか?」

 休みの日に部屋を訪ねると、彼は得意げにスマホを差し出した。

「なに、心配するな。俺は元気だ。見てみろ」

 流行りの動画投稿アプリで、沖田くんと土方さんが新選組の羽織を着て殺陣の真似事をしている。いったいどういう心情でこれをやったのか。

「総司に誘われて、面白そうだからやってみた」

 イケメン二人がコスプレで殺陣をする動画には、二万を超えるいいねがついていた。フォロワーも千人を超えている。

 すごい。俳句メインのSNSより、よほどフォロワーが多い。これが動画の力か。

 楽しんでやっているならいいけど、私には空元気に見えて仕方がない。自分を盛り上げるために、無理しているのかな。

 一週間後、とうとう原田先生が土方さんの部屋に押しかけた。なぜか、私と沖田くんも呼ばれた。

「はっきり言おう。トシさん、あんた修学旅行の一件で、精神的に参っているだろう?」

 原田先生が卓袱台越しに土方さんと向き合った。

 先生の後ろで座っていた沖田くんがきょとんとしていたので、隣にいた私から小声で事情を伝える。

「ああ……仕方ないよ。情報なんてそこらじゅうに溢れてるもん。美晴のせいじゃない」

 沖田くんは意外に落ち着いた反応を見せた。彼にとって今の状態は、十分予測できた事態なのだ。

「鴨川に飛び込みたい気持ちはわかるけど、美晴ちゃんが言う通り、溺れて死ぬことだってありえる。あんたは現代で生きていくんだ。幕末のことは胸にしまってさ」