次の日から、私たちは通常の仕事に戻った。旅行自体休みのようなものだったし、私たちがいない間、他の職員が頑張ってくれたので、それ自体に不満はない。
しかし、土方さんの様子が少し変わっていた。
「トシさん、どうしたんだい。手が止まってるよ」
パートのおばさんに指摘され、土方さんは我に返ったような顔をした。
彼の手には、大きな杓子が。大鍋のカレーを作る途中で、意識が幕末に行ってしまったらしい。
「ボーッとしてちゃ、あっという間に焦げちまうよ」
「ああ、悪い」
先に野菜を蒸して柔らかくしておき、肉と一緒にカレールーを炒める。ルーが溶けて具と絡んだら、水を入れて煮込む。そうすると短時間でよく煮込んだようなカレーになる。
と、土方さんがどこかから仕入れてきた情報に従ってやっているのだけど、当の本人が心ここにあらず。カレールーは焦げやすいので、パートさんも気を揉んでいた。
土方さんは私たちより強い腕力で、力任せに杓子を動かし、具とルーを炒め合わせる。
パートさんがこちらに視線を送ってきた。あの力では、柔らかくした野菜が粉砕されてしまう。