彼にとって近藤さんはまだ生きている人であり、手を合わせる気にはなれないのかもしれない。

 土方さんの気が済むまで、ここにいよう。そう決意した矢先。

──ぐううううう。

 最悪なことに、私のお腹の虫が最大音量で鳴ってしまった。

「ははっ、なんだ今の。気分壊すんじゃねえよ」
「ごごごごめんなさい」
「そろそろ行くか。ここでじっとしていても、元治元年に帰れるわけじゃねえし」

 手を離した土方さんは私の頭をぽんぽんして、境内の方へ戻っていく。私は近藤さんの遺髪塔や他の隊士のお墓に手を合わせてから、彼の背中を追いかけた。