胸の内で語りかけているのだろう。あるいは、様々な思いがこみ上げてきて、言葉を失っているのかもしれない。

 二人の絆の間に、私が入り込む余地はない。邪魔しないよう、黙って隣に立つしかできなかった。

 しばらくして、土方さんが呟いた。

「立派な顔してるぜ。なあ、この近藤さんは何万石の大名に見えないか」

 おそらく土方さんと同じように、残された写真をもとに作られたのであろう。近藤さんは百姓には見えなかった。

「ええ、立派な武士に見えます」
「そうだろう。堂々としている。これほど後世まで語り継がれる英雄になったんだな」

 見上げた土方さんは、誇らしげな表情をしていた。寮母をしているときには見たことがない、眩しい横顔。

「そうですよ。これだけ後世の人たちが、新選組を大事にしてくれている。新選組がたくさんの人々に愛されているからこそです」

 そしてそこまで新選組が有名になったのは、土方さんがいたから。漫画や本を読んだけど、副長土方歳三がいなければ、新選組はここまで愛される存在にはなれなかったであろう。

「ありがとう」

 土方さんは近藤さんの像を見上げたまま、私の手を取った。そのまましばらくじっとしていた。