彼らは京都の見回りや要人警護、不逞浪士と呼ばれる人たちの取り締まり……今で言う警察官のような仕事をしていたらしい。ただ違うのは、新選組も不逞浪士も刀を持ち、度々斬り合いをしていたということだ。

 結局、時の流れに勝てなかった新選組は、薩摩藩・土佐藩・長州藩らを中核とした新政府軍に負けた。

「あの……もしかして、本当に土方歳三さんなんですか?」

 じゃなければ、幕府がなくなったと聞いただけでこんなにへこまないだろう。現代人なら、消費税を上げられる方がよっぽどへこむ。

 それに、写真の土方さんと目の前の自称土方さんはそっくりだ。近くで見ても化粧っけがないので、メイクなどで近づけたわけではないはず。

「うむ」

 膝を抱えたまま、こくりと頷く土方さん。元治元年にはまだ、江戸幕府があったのだろう。天保六年から数えると、元治元年には三十歳のはず。もう少し若く見える。

「あなたは昨夜、ここの裏庭で倒れていたんです。気を失う前のことを覚えていますか?」

「……俺は不逞浪士を追っていて……。突然激しい雨が降ってきて、足を滑らせ」

「滑らせ?」

「橋の上から鴨川に落ちた」

 川に落ちて、流され、気づいたら寮の裏庭にいたと。