土方さんの目尻に熱いものが光ったような気がした。もっとライトに楽しんでくれるだろうと思っていた私は、戸惑う。
天皇がいない御所で、こんなに感動するなんて。
「近藤さんに会いたいですか」
つい、そんな質問が口をついて出てきた。
「もちろんだ。俺は勝っちゃんを大名にするために、今までやってきたんだ」
土方さんの飾らぬ本音が、やっと今聞こえた気がする。
「ああ、勝っちゃんってのは近藤さんの幼名でな。俺は新選組を日本一の政治組織に仕立てて、近藤さんを大名にして……」
農民出身でも、誠の武士になろうと、死にもの狂いで努力してきた。その結果が出はじめたところで、現代に流されてしまった彼の無念は、いかほどのものだろう。
「悪ぃ。こんな話、つまらねえな。よし、せっかくだから写真を撮っていこう」
突然我に返ったように、不自然に笑う土方さん。彼は私から離れると、清涼殿の写真を何枚も撮った。最後に近くにいた観光客にスマホを渡した。
「おい、一緒に撮るぞ」
手招きされたので、慌てて駆け寄った。二人で並んで撮ってもらった写真は、清涼殿と私たちが絶妙なバランスでおさまっていた。