休憩所の前を通り、御車寄──天皇に会いに来た客が牛車を停める場所──から紫宸殿──天皇即位などの儀式を行うところ──を通る。
どれも歴史を感じる壮麗な建築物だ。どれも武士っぽい武骨な感じではなく、なんとなく優雅でまろみがある。そしてついに、天皇の住まいである清涼殿に向かって歩いていると、土方さんはまた立ち止まってしまった。
隣にいる彼を見上げると、小刻みに震えていた。
「こんなに中まで入れるとは思わなかった。俺たちが配置についたのは、御花畑だったからな」
「もしや、武者ぶるいですか?」
土方さんはこくりと頷く。農民出身の近藤さんや土方さんは上洛してからも周りになめられていて、真の武士として扱ってもらえなかったと聞く。
文久三年、八月十八日の政変で彼らに割り当てられたのは御所南門前の御花畑。命令によって出動した新選組の前身、壬生浪士組の存在を知らない会津藩兵に足止めされたりして、なかなか大変だったらしい。やっとこさ御花畑までたどり着き、やる気満々だった新選組だけど、結局敵は来ず、やる気は不発に終わった。
沖田くんは、土方さんが感動するとわかっていたから御所に来ることを提案してくれたのだろう。昔彼らと一緒にいた記憶がある沖田くんだからこそ。
沖田総司は武家の生まれで、近藤さんや土方さんとは多少立場が違うけど、御所に出入りできる身分でなかったのは同じだ。
もし三人一緒だったら、肩を抱き合って喜んだだろう。
「近藤さんがいたら、泣いて喜んだだろうな……」