私はまだ、体の中心に熱を帯びるような、この感覚をよく知らない。

「ごめんなさい。放してくださいっ」

 混乱した私は、半泣きで叫んだ。

 すると土方さんは、ぱっと私から離れ、両手を上げた。苦笑寸前の顔で私に言う。

「イタズラな。そういうことにしておいてやるよ」

「本当なんです」

 乱れた浴衣を直し、土方さんに背を向けて座った。心臓が痛いほど脈打っている。

「ようし。イタズラする悪いやつには、こうだ」

「えっ。あ、ちょ、ひい。やめてくださいっ」

 土方さんが私の背中や脇腹を容赦なくくすぐる。私が身をよじっても、なかなかやめてくれない。

「疲れが足りないから眠れないんだよ」

「そんなこと、ははははっ、うひゃああ」

 ひとしきり責め立てられたあと、私はぐったりと横たわった。

「おし、寝ろ。俺も寝る」

 元の場所に、私たちは戻った。笑いすぎて疲れた私は、だらんと手を広げる。

 すると、その手をするっと土方さんの手に包まれてしまい、驚きで目を見開いた。

「またイタズラできないように、こうして寝よう」

「もうしませんよ。大丈夫です」

「いいや、信用ならねえな。じゃあおやすみ」

 土方さんは手を放してくれず、瞼を閉じて静かになった。

 とくんとくんと、高鳴った鼓動が手から伝わってしまわないか心配になる。

 もう余計なことを考えるのはやめて、寝てしまおう。

 瞼を閉じ、腹式呼吸をしていると、いつの間にか眠りの世界に旅立っていた。

 繋がれた手が、いつまでも温かかった。