お互いに最上階にある大浴場で入浴を済ませ、部屋に戻ると、土方さんは「疲れたな」と言ってベッドに横たわった。
初めて新幹線にも乗ったし、人が多い街を歩き回ったんだものね。
「お疲れ様です。おやすみなさい」
目を閉じた土方さんのために、灯りを消した。私も早く寝よう。明日もあるし。
ベッドに横たわり、ちらと隣にいる土方さんを見る。
本当に、なんにもしないんだもんな。やんちゃな頃は数々の浮名を流したくせにさ。
別になにかされたいわけじゃないけど、こうも意識してもらえないとちょっとへこむ。私って、やっぱり女性としての魅力に欠けるのかも。
とりとめのないことを考え始めてしまったせいか、単に枕が変わったせいか、体は疲れているはずなのに、なかなか寝付けない。
つけっぱなしのエアコンのせいか、喉が渇いた。水を飲もうとして、ゆっくり体を起こす。目がすっかり闇夜に慣れていた。
横を見ると、土方さんが仰向けになって寝ている。長いまつ毛の影が、頬に濃く模様を描く。
彼の寝顔を見るのは、最初に保護したとき以来だ。あの時は発熱していて苦しそうだったけど、今は安らかな寝顔をしている。
今日は土方さんに翻弄されっぱなしだったな。