「あのう、今何年何月か答えられます?」
「元治元年九月だろう」
よどみなく答える彼に、不安に似たモヤモヤを感じた。もしや、本気で言ってるの?
「今、令和三年です」
「令和?」
私は彼の手の中にあるスマホを指先で操作し、日本の歴史年表を検索して表示した。彼は始終目を見開き、信じられないものを見る目つきをしていた。
「ここがあなたがいた幕末。今ここだから……だいたい百五十年ちょっとの開きがあります」
「幕末……?」
「江戸幕府末期。江戸時代の終わりです」
彼は私を見つめ、表情を凍りつかせた。
「ってことは、江戸幕府は潰れちまったってことか……」
がっくりと肩を落とす自称土方さん。芝居にしては細かすぎる。
「ええ、そうですね。今の日本に幕府はありません。将軍も武士もいません」
「ちょっと待ってくれ」
とうとう頭を抱えた土方さんは、目を閉じて丸くなってしまった。途方に暮れた子供のように、動かなくなる。
その間にささっと調べたが、新選組は幕府側の組織だったらしい。主に京都の治安維持が全盛期の仕事だった。