最終的に、目に留まった天ぷらのお店にふらっと入ったら、これが大当たりだった。庶民的な価格で、目の前で揚げた天ぷらを出してくれた。土方さんもいつもより食が進んでいるようだった。
会計を済ませてお店を出ると、土方さんのスマホに電話がかかってきた。
もしや、寮生のトラブル?
一気に心臓が縮んだ気がしたけど、土方さんは表情を和らげ、スマホを私に寄越した。
「総司がお前に代わってほしいってよ」
「沖田くんが?」
「あいつは師素困だからな」
シスコンだなんて、誰が教えたんだろう。叱るように彼の腕を叩きつつ、電話を代わる。
「もしもし? 沖田くん?」
『美晴、無事?』
無事ってなんだろう。それはこっちのセリフだけど。
「元気だよ。そっちはどう?」
『一通り寮生の様子を見てきたけど、みんな落ち着いて普通に楽しんでたよ』
沖田くんの明るい声に、ホッと胸をなでおろす。
「よかった」
『美晴や土方さんのおかげで、みんな変わってきたのかもしれない』
「えっ?」
『土方さんが来てから、精神的に落ち着いたっていうかさ。やっぱり、誰かが自分を見てくれていると思うとうれしいものだよね。おかげでフワフワしていたやつらも、地に足がついた感じがするよ』
うれしそうな沖田くんの声が、私までうれしくさせてくれる。
沖田くんが、今日はやけに素直だ。彼自身、京都に来て色々と思うことがあったのだろう。