「土方さん、これは写真を撮らないと!」
今日一番テンションが上がった私は、お店の人に了解を取り、パフェを撮影しまくった。私の前では、土方さんもいつものように、パフェと自分の顔を並べて自撮りしている。
「いただきます! う~ん、おいし~い!」
ほわほわと口の中で溶ける抹茶ムースとティラミスに、舌をとろかされそうになる。至福の時間を味わっていると、思いがけず、顔のすぐ近くでシャッター音が鳴った。
ハッと視線に気づくと、土方さんが私にスマホを向けていた。思わずスプーンを落としそうになる。
「ちょ、やめてください」
「いいじゃねえか。やっと笑ったんだから」
「え?」
「美晴はいつも、真顔か怒っているか、悩んでいる顔が多いけど。笑った顔が、一番いい」
一句浮かびそうだ、と土方さんは宙を仰いだ。
「私って、そんな顔ばかりしています?」
「あ? ああ。真面目すぎるんだよ、お前は。もっと楽にして笑ってろ、な」
ドヤ顔で見せてきた土方さんのスマホの画面には、マヌケな顔でティラミスを食べている私が写っていた。まあ、マヌケだけど、幸せそうではある。
私、土方さんの前ではこんなに幸せそうに笑うんだ。
「もう」
結局、すべての行程が終わるまで、トラブルの連絡はく、ほっと胸を撫で下ろした。今日は、団体行動のバス移動だったからということもあるだろう。