清水寺を出てから昼食をとり、次は八坂神社に向かった。朱色の壮大な西楼門が視界に迫る。
「八坂さんか」
「来たことがあるんですか?」
「池田屋事件が、祇園祭の宵宮だった。あれで町中大騒ぎになっちまって、八坂さんには迷惑をかけた」
「ひえっ」
かの有名な池田屋事件のことか。祇園祭って、八坂神社の祭礼だものね。
京都のひとたちも楽しみにしていたお祭りを、血で汚した。そんな風に言われたのかもしれない。
「あれから禁門の変があって、結局京は丸焼けになった。長洲のやつらと市中で戦いが起きて……おっと、すまねえ。つまらねえよな」
「いいえ、そんなことないです」
階段を昇り、西楼門の前から市街を見下ろす。今は大きな道路があり、自動車がひっきりなしに通っている。
お土産店や飲食店が軒を連ねる街並みは、とても賑やかだ。昔はどのような街だったんだろう。
「焼野原だった京が、ここまで発展しているとは。人は強いもんだな」
「ええ、本当に」