土方歳三は、その姿を写した写真を後世に残している。幕末に撮られたものなので画像は荒いけど、顔が整っていることはわかる。

 写真の土方さんは髪を短く切り、洋服を着ていた。モノクロなので実際の色はわからないが、黒っぽいベストとジャケット、ズボンに乗馬ブーツのようなものを合わせている。首元には、スカーフっぽいものまで。当時ではモダンな着こなしだったのではないかと思われる。

 文明開化ってすごい。あの寒そうな水色──浅葱色というらしい──の羽織からここまでたった数年で進化したのね。

「それにしても、似てますねえ」

 私は写真と同じ顔をした自称土方さんを、まじまじと見つめた。

 白い肌、漆のように艶やかな黒髪、すっと通った鼻筋。こんなに整った顔の男性、初めて見た。うっかり見惚れてしまいそう。

 切れ長の目に注目すると、視線がかち合った。どきりとして目を逸らす。

「その機械はなんだ?」

「ああ、はい」

 私は彼の写真を表示したスマホを差し出した。

「なんだこれは!」

 自称土方さんは私からスマホを奪い、画面を凝視した。手が小刻みに震えている。

「スマホです」

「俺が……ホトガラに……それがこのちっせえ箱の中に……」

 ホトガラ……ああ、フォトグラフィー、すなわち写真のことか。