「ひえあっ、あわ、わの」

「二人だ。よろしく頼む」

 私が反論できない間に、土方さんが勝手に受付をする。

「いや~ラブラブなんですね~。お着物着たらもっと盛り上がりますよ~」

「そうなんだよ。かわいくて仕方ねえんだ。若者らしく爽やかに仕上げてくれよ」

「かしこまりました!」

 セールス上手なお兄さんに案内され、あれよあれよという間に店中に引き入れられてしまった。

 ひ、土方さん、いったいどういうつもり。私を混乱させて、お店の人に嘘を吐いてまで、私に着物を着せたいの?

 薄い藤色地に白い桜の花と紅葉とイチョウの葉が舞う、秋らしい模様の着物に帯を締められる。飾りに白いサテンのフワフワ生地でできた帯が後ろからのぞく。髪を編み込まれ、レースと造花の着いた髪飾りを装着され、私は土方さんの前に出た。

 土方さんは黒い着物に青みがかったグレーの羽織を合わせ、帯は差し色の赤。

「さすがによく似合ってますね。かっこいいです」

 素直に見上げた土方さんは、目を細めて微笑む。

「お前もな。洋髪でも似合うものだな。いつもより数段、女っぷりが上がった」

「あはは、着物が素敵だからですかね」