「お兄さん方、ゆっくり行くならうってつけの提案がありますよ」

 水を差すように、すぐそばのお店から若い男の人の声がかかった。

 そちらを見ると、モダンな店構えに『京都着物レンタル』の看板がかかっている。

「お兄さん、とても和服が似合いそうなお顔をしていらっしゃる。お連れ様もきっとかわいらしくなると思いますよ。今ならご予約なしでもすぐにご案内できます。いかがですか?」

「着物を貸してくれるお店です。雰囲気を盛り上げるためにする人もいるんですね。私たちには必要ないかと」

 こそこそと土方さんに耳打ちすると、彼は「ふむ」と顎に手を当てた。

「いいじゃねえか。貸してもらおう」

「ええっ!」

 だって土方さん、着物なんて着慣れてるじゃない。珍しくともなんともないはずなのに。

「着物を着た美晴を見てみたい。いいだろ?」

 不意に頬に触れられ、顔が燃えるかと思った。彼は恋人にするように、私を視線で溶かそうとする。