「七つ……」

 まだまだ、お母さんの愛情がほしい年頃じゃないだろうか。

「だから、世間の親がどんなもんかは知らねえけどよ。常に近くで見守るだけが母じゃねえだろ。子のことを信じて、家でどんと構えて待っていたっていいんじゃねえか」

 土方さんの話を聞いているうちに、亡くなったお母さんの顔が頭をよぎった。

 お母さんは「女の子だって自立するのが当たり前だからね」と毎日のように言っていた。今料理ができるのも、お母さんが仕込んでくれたおかげだ。

 基本を教えたら、お母さんは口出しをしなくなった。自由にやらせてくれた。料理以外のことも、決定権は私に委ねてくれることが多かった。

「私、焦ってたのかな……」

 傍で見守っていたいと思うのは、私自身、もっとお母さんに傍にいてほしかったという無念さがあるから?

 よかれと思ってしていたことでも、寮生に対して押しつけでしかなかったのかも。

「違う。いい母であろうと、頑張りすぎなんだよ」

 うつむいた私の頭に、なにかが乗る。この温かみは、土方さんの手だ。

「寮生も俺たちが近くでウロウロしていると、落ち着かないだろ。そもそもこっそり見守るが目的のはずだ」

「あ……」

「あいつらだって、せっかくの旅行中だ。そうそう悪さもするまい。ゆっくり行こう」

 土方さんは私の手を握って言った。