心から楽しむ気になれないまま、出発当日を迎えた。

 早朝に学校に集合する寮生を見送ると同時に、私と土方さんも寮を出た。学校には向かわず、駅へ直行する。

 駅のホームで初めて新幹線を見た土方さんは、目をぱちくりさせていた。

「こりゃあ、今まで見たもんより一層わけがわからねえ」

「蒸気機関車が進化したんですよ」

「蒸気車か。ぺるり提督が模型を持ってきたって話は聞いたが、こんなもんじゃなかったはずだ」

 ぺるりって、ペリーさんのことか。黒船を見て死ぬほど驚いた幕末の人だものね。新幹線は宇宙船みたいに見えるのかも。

 新幹線がホームに入るまで警戒していた土方さんも、乗り込んだら「バスと変わらねえな」と言って落ち着いた。