寮生になにかあったとき、すぐに対応できる距離にいるのを前提として、なるべく目立たないように行動しなくちゃ。
「でもさあ、男女ふたりきりで行動して、同じところに宿泊するんだろ? それってちょっと、微妙じゃん?」
「なにが微妙なんだ?」
質問した原田先生に、沖田くんが珍しくもごもごと言葉を濁す。
「だって百戦錬磨の土方さんだよ。いきなり狼にならないとは限らないじゃない。たとえ相手がいつも会っている美晴だとしてもさ。周りには誰もいないわけだし……」
私は飲んでいたお茶を噴き出しそうになった。なにを想像しているの、沖田くん。
「お前は昔から姉さん子だもんな。美晴が好きなのはわかったが、俺が夜這いでもかけると思うのか」
呆れたように言った土方さんに、沖田くんは真っ赤な顔で噛みつくように反論する。
「は⁉ べ、別に好きじゃないし」
そっか、お姉さんに育てられたからシスコンなのか。それで、私にお姉さんを重ねて見ているというわけかな。
「どうだろうな。まあ安心しろよ。お前たちがいざこざを起こしたらすぐ出動できるように気をつけているから。美晴としっぽりしている暇はねえよ」
沖田くんはますます真っ赤になり、黙ってしまった。原田さんははははと大きな口で笑う。
もう、本人を前にしてなんという話をしているの。夜這いなんて、されるわけないじゃない。
しかし、ふたりで遠出なんてさすがに緊張しちゃうな。しかも行先は京都。元々新選組がいた土地だ。