「なにか悩んでたの?」
沖田くんが単刀直入に聞く。
「はい……。俺、冬休みに家に帰ることになって」
場が静まり返った。家にいられなくなった者が集まる場所から帰る。めでたいことに見えるが、それだけでは収まらないことを、私たちは知っている。
たしか彼の両親は離婚していて、母親が彼の親権を持っているはずだ。
「冬休みだけなんですけど、今から緊張しちゃって。うちのお母さん、彼氏がいるときは俺を邪魔者扱いしているくせに、いないと寂しくなって依存してくるんですよね」
力なく笑った彼は、するすると焼きそばを力なくすすって、噎せた。
「おいおい。ゆっくり食べろ。話はそのあとでもゆっくり聞くから」
原田先生が有田くんの背中をさする。彼の全身は骨が浮き出るくらい、細い。
「ここの食事はいいな。家だとまともなもの食べられないから……」
「おいしい? まだ残っているからいっぱい食べて」
「ありがとうございます。とってもおいしいです」
素直で、優しい子だ。それに、周囲にとても気を使っている。家に帰ると、お母さんに気を使い続けてしまうのだろう。
「無理して帰らなくてもいいんじゃねえか? ここにいろよ」