沖田くんは、自分が恵まれている方だとわかっているのだろう。それ以上は不満を言わなかった。

「あのう、お昼ご飯まだありますか」

 声をかけられて顔を上げた。土日の寮生のお昼ご飯は基本自由だ。食堂を利用するなら、前の週に希望を出しておかねばならない。

「ええと、君は一年生の有田くんだよね」

 私は希望者の名簿を確認し、彼がちゃんと希望を出していたことを確認した。まだ食事をしていないことも。

「ちょっと待ってね。温め直すから」

 寮生が食事をする時間は決まっているが、それを過ぎてしまったからといってなにも食べさせないのは気の毒だ。

 大鍋に残っていた具だくさんの焼きそばをお皿に盛り、レンジで温めた。その間に卵スープをお椀に入れる。

「はい、どうぞ。いつも遅れないのにね。寝過ごしちゃった?」

 温まった昼食をトレーに乗せて差し出すと、有田くんはこくんと頷いた。

「色々考えていたら眠れなくて」

「そうなの……。もし私たちでよければ、話を聞くよ?」

 なるほど、少しふらふらとしていて、顔色もよくない。身体に力が入らないようだ。

「こっちに座れ」

 土方さんが私たちの席のすぐそばに、有田くんを誘導した。