十月初旬。ある日私は、寮生たちの外出許可証を確認し、ファイルに綴じていた。

 来週の半ば、ほとんどの二年生が一気に外出することになっている。なぜなら、二泊三日の修学旅行があるから。

 家族旅行をできるような環境にない寮生にとって、修学旅行は数少ない外泊の機会である。

「でもどうして行先が京都・奈良なのかな。せめて沖縄か北海道でしょうよ。一般の生徒も不満タラタラですよ」

 食堂で軽口を叩く沖田くんに、食事を終えた原田先生が答える。

「旅行代、就職してから返さなきゃならないんだぞ。寮生の負担を軽くしようという理事長の思いやりだよ。一般のやつらもお前らも、自分で稼いでから好きなところに行けばいい」

 寮費、その他諸々を支払う能力のない寮生は、就職してから少しずつそれを返さなくてはならない。いくら及川学園の寮費が格安とはいえ、借金には違いない。学校側が就職を強くすすめてきたのはそのせいでもある。

 今日は土曜日。修学旅行に行く二年生は、外出して必要なものの買い物に行っている。

 閑散とした食堂で昼食をとった私、土方さん、原田先生、沖田くんはのんびりお茶を飲んでいた。沖田くんは、旅行に必要なものはすべてお姉さんが送ってくれたという。

「そりゃわかるけどさあ」