「あのう、明日の食材の確認とは?」

 明日の朝食の準備ならもうだいたいしてあるし、今からやることなんて……。

「ああ……牛乳の消費期限が俺には見えないから見てほしい」

 えっ、それだけ? じゃあ、原田先生を追いやらなくても。何分もかからないんだから、みんなで一緒に部屋に戻ればよかったのに。

 ちなみに原田先生の部屋は、私たちとは違う階にある。

「老眼ですか? まだ三十なのに?」

「俺は異国の文字が苦手なんだよ」

 ぷいと背を向けて火の元を確認する土方さん。

 そうだっけ? いつもすぐ現代の文明に順応しているから、英数字も読めると思っていたけど、違うのかな。

 首を傾げつつ、冷蔵庫の中身を確認する。牛乳は、余裕で消費期限内だった。

「大丈夫です」

 背を伸ばして振り返ると、目の前に土方さんがいた。

 驚く暇もなく、彼の長い手がドンと背後の業務用冷蔵庫につく。

「美晴。言いたいことがある」

 真剣な顔で見下ろされ、ごくりと息を呑んだ。もう少しで、お互いの胸が重なってしまいそう。

「大事な話をするとき、現代ではこうするんだろ?」

 壊れそうなくらい高速で鳴る心臓。なにこれ、どういう状況なの?