原田先生と会った日、土方さんはしきりに「元治元年に帰りたい」「近藤さんに会いたい」と言っていたっけ。

 現代の生活もそれなりに楽しんでいるように見えていたけど、彼の本音はやはり、幕末に帰りたいと思っているのだ。

 幼なじみでもある近藤勇局長を支え、新選組を切り盛りしていた日々に戻りたいと思うのは、無理もないことだ。

「……美晴ちゃんは、トシさんのことどう思っているの?」

「はい? どう、とは?」

「昨日から気になってたんだけどさ。美晴ちゃんはトシさんのこと、好きなの?」

 原田先生が歩みを止めたので、私も立ち止まってしまった。立ち尽くしたと言った方が正しかったかもしれない。

「え……」

「トシさんを見るとき、一番かわいい顔しているからさ」

 微笑む原田先生の顔を、まっすぐに見つめ返した。

 私が、土方さんのことを、好き?

 だからあんなに、他の女性とデートをしていたことが悲しかった? 嫉妬をして、いじけて、辛く苦しい気持ちになったのは。

 私が土方さんのことを、好きになっているから。

「ま、ままままっままさか!」

 ちぎれそうなくらい勢いよく首を横に振った。

 そんなの、認めるわけにはいかない。そんな不毛な恋をするものか。