「困っていたことろを、及川理事長に拾われた」

「あのおばあちゃん、イケメンが困っていると秒で拾うよね」

「こらっ」

 私は沖田くんを叱った。恩人に向かってなんてことを。たまたま最近イケメンを連続して保護しただけだから。

「嫌なことを思い出す」

 土方さんは呟き、作業を再開した。テーブルを拭き上げた私をよそに、箒を持っているだけの沖田くんが軽口を叩く。

「ああ、十代のときに奉公先の女中を孕ませたってやつですか。あれ、本当はあの女中、番頭と深い仲だったんですよね。番頭が妻子持ちだったから、土方さんのせいにされて追い出されて」

「うるせえな総司! 名前の通り、きっちり掃除しやがれ!」

 そんなことがあったんだ。色男も大変だ。総司と掃除をかけるあたり、さすが豊玉宗匠。うまくないけど。

「そういえば、近藤さんはいないのか?」

「みんな、どこかで転生しているかもですね。会いたいなあ」

「俺は幕末の近藤さんに再会したい」