「美晴に拾われて、今はここに厄介になっている」
「とんでもないことだな。あんたがいなくなったら、新選組はどうなっちまうんだ」
沖田くんと同じく、原田先生も今後の土方さんの行く末をネタバレしてしまいそうだったので、慌てて今の土方さんは禁門の変までしか知らないことを説明した。
「そうか。まあ、来ちまったもんは仕方ないよな。どうしようもないんだし」
「現代でも隊務尻っ屁とやらに対応する方法はないのか。本当はすぐに帰れる乗り物でもあるんじゃねえのか。お前なら知っているだろう?」
土方さんは原田先生にすがるように質問する。必死の形相だ。
「タイムスリップな。残念だが現代でも、さすがに時間の行き来はできないよ」
バスに乗ったり、テレビで電車や飛行機を見た土方さんは、時空を行き来できる乗り物もあるのではないかと思っていたらしい。そういえば、タイムマシンが出てくるアニメを、食い入るように見ていたこともある。
土方さんは力なくうなだれると、「そうか」と呟いた。
「力になれることがあったらなんでもするよ、トシさん」
親し気に土方さんの名を呼ぶ原田先生。
「ありがとうよ」
土方さんは微笑み寸前といった表情を返した。うまく笑えないのだろう。背を丸めて部屋を出ていく彼を、原田先生が呼び止める。
「おい、美晴ちゃんに蛍光灯の場所を聞くんじゃなかったか?」
「あ? ああ、そうだった」
立ち止まって振り返る彼は、いつもの頼りがいのある彼ではなかった。
そうか。最近はそんな素振りを見せなかったけど、土方さんはずっと幕末に帰りたがっていたんだ。
しょんぼりした彼の顔を見たら、こっちまで胸が痛くなった。