思わず大きな声が出てしまった。原田左之助といえば、新選組十番隊隊長に同姓同名の人がいた。槍の名手で、土方さんと並ぶほどの色男だったという。

 いやまさか、こんなに都合よく原田左之助まで現れるわけないよね。

「どうかしましたか?」

 原田先生も理事長も、キョトンとしている。

「い、いえ、なんでもありません。では原田先生、よろしくお願いいたします」

 理事長に暇を告げ、学園を後にした。寮までの道中、原田先生が話しかけてきた。

「美晴ちゃんは今いくつ?」

 いきなり名前呼びをされ、戸惑う。土方さんと同じく、自分に自信があるからこその態度だ。

「二十三です」

「そっか。俺の四つ下だ」

 屈託のない笑顔に、悪意は感じない。

「ところで美晴ちゃんって、新選組とか詳しい?」

「えっ⁉」

 いきなり新選組というワードが出てきたので、私はのけ反ってしまった。

「原田左之助って名前に反応するのは、新選組ファンって決まっているから。近藤、土方、沖田は有名だけど、原田はけっこう詳しくないと知らないだろ?」

 そうなんだろうか。うん、たしかにそうかも。私も漫画を読むまで、原田左之助の名前は聞いたことがなかった。