言ってしまってから、失言だと気づいた。雇い主であり、命の恩人である理事長に、お母さんだなんて。

「そう言ってもらえて、私もうれしいわ」

 しかし理事長は気分を害した風でもなく、柔らかく微笑んだ。照れてしまった私は黙ってうつむく。

「理事長、原田先生をお連れしました」

 背後から声がした。理事長の秘書さんと、新しい教師さんだろう。

 私はゆっくりと振り返った。そこには、見たことがある中年の秘書さんと、背の高い若い男の人が立っていた。こちらが原田先生だろう。

 原田先生の背は、長身の沖田くんより、もう少し高いかもしれない。ゆうに百八十センチは超えていそう。均整の取れた体に、均整の取れた顔が乗っている。

 土方さんとは別のタイプのイケメンだ。ちょっと垂れ目で、母性本能をくすぐられる。高い鼻が特徴的だ。

「あらあら、見惚れちゃった? 原田先生、男前よね~」

「ちょ、やめてください。はじめまして、寮母の上野美晴です」

 立ち上がり会釈すると、相手もにこやかに笑って会釈を返す。

「原田左之助です。よろしく」

 感じのいい人だな。原田先生ね。ん? 原田……さのすけ……?

「原田左之助⁉」