「教師は寮母とは別で必要だということが、土方さんのおかげでわかったの。あの人、実はすごい人ね」
「はは……そうですね」
土方さんは、長く勤めている寮長や私より、決断力と行動力、なにより人心掌握力がある。それは認めずにはいられない。
さすが新選組副長といったところか。まさか、ひとりの寮生のために学園に乗り込んでくれるとは思っていなかった。
「ん? ちょっと待ってください。寮に教師を?」
まさか、小野先生が寮に通うようになるとか、そういう話じゃないでしょうね。
それはいけない。寮の風紀が乱れる。というか、私の心が乱れる。
「そうよ。さっそくだけど、常駐してくれる教師が見つかったの。今日はあなたに、彼を案内してもらおうと思って」
「それはいいですけど、案内なら寮長の方がよかったのでは?」
影は薄いが、そういう重要な役割は、やはり最高責任者の方がいいのでは。
「いいのよ。たまには女同士でお茶したかったんだから。ここには男の子しかいないでしょう?」
おどけた表情で言う理事長がかわいくて、笑みが零れた。
「ふふ。私も理事長とお茶をするのが楽しいです。まるで、お母さんといるみたいで」