間もなく九月が終わろうとしている。やわらかな秋の日差しが注ぎ込むテラスで、私は理事長と向かいあって座っていた。

 残暑はだいぶ和らいだとはいえ、長袖を着て日向にいると、しっとりと肌が汗ばんでくるのを感じる。

「いい中庭でしょう」

 常緑樹の中に、白い蝶が群れて飛んでいるように見える花が植わっている。名前は知らないが、株の大きな花だ。

 ここは、及川学園の中庭テラス。今は授業中なので、私と理事長の他に人はいない。

「土方さんが連絡をくれて、初めて一般生徒と寮生の進路指導に差があることを知ったのよ。ごめんなさいね」

「いいえ。寮生の中で進学希望の生徒はそうそういませんから仕方なかったんです。私や寮長も、生活面だけでなく、そういう勉強をしなくてはいけませんね」

 大学中退の自分が、他人の進路に口を出すなんておこがましい。本人の道は本人で決めるべき。そう思っていたけど、実はあまり深く関わりたくなかったのかもしれない。寮生が卒業後どうなっても、責任がとれないから。

「そんなことないわ。あなたは教師になってはいけない。母であってほしいのよ」

 もう何度も聞いたセリフで、私を励ます理事長。私は微笑み、うなずいた。