翌日。台風一過の晴天を見上げ、寮生たちはいっせいにブーイングに近いため息を吐いた。
わかるわかる。私も学生の頃は、台風が夜のうちに過ぎ去っちゃったり、進路を変更して来なかったりすると、がっかりしたもの。二十三歳になった今でこそ、被害がない方がいいじゃないかと思えるけど。
悲しそうな顔で朝食を食べ終えた寮生たちは、今日もだらだらとした態度で出かけていった。
朝五時から約五十人分の朝食を用意し、片付けただけでどっと疲れた。食事の支度は基本、寮長か私とパートのおばさんふたりでやる。欲を言えばもう少し体力のある人手がほしい。
他の正職員のふたりは朝八時半から勤務する契約で、炊事はしない。その代わり、経理や事務、寮全体の点検維持、掃除、生徒の家族への連絡や書類送付、食事の献立作りなど、多岐にわたる仕事をしている。
パートのおばさんは五十を過ぎており、片づけが終わるころにはふらふらになっている。仕事が終わり、寮生と同じメニューの朝食を食べていたら、寮長がふらりと厨房に現れた。
「美晴ちゃん、食事が済んだら交代してくれるかな」
「あ、はい」
一晩中コスプレさんの付き添いをしていた寮長は、昨日の台風の準備もあり、くたくたになっていた。目の下のクマに疲労の色が濃く出ている。
私は寮長とバトンタッチし、厨房を出てそちらに向かった。