「だってさっき、土方さん……ひとりで出かけて、女の人と……」

 説明する喉が、焼けたようにヒリヒリして痛い。油断したら泣いてしまいそうだった。

「ああ? だからそのことを話したいって言ってんだろ。なに勘違いしてんだ」

 今度はこっちがキョトンとする番だった。土方さんはひとつ息を吐いてから、落ち着いて話しだした。

「あれは、及川学園の教師だ。進路指導担当の小野先生」

「えっ」

 進路指導って、まさか。

「理事長経由で合わせてもらった。湊に限らず、寮生の進路指導も、一般の生徒と差別せずに行ってほしいと、直談判してきた」

「直談判……」

「小野先生は、寮に進路指導できる職員がいると思っていたらしい。こちらにはろくな資料もないし、寮生の生活を支えることで手一杯だと伝えたら驚いていた。他の教師とも連携して、対応してくれるらしい」

 湊くんの話では、そうとう冷たくあしらわれたみたいだった。なぜ土方さんだと、話がすんなりいくのか。

 もしや、小野先生は、現れるだけで場の空気を変えてしまう土方さんのビジュアルに陥落した? いや違う。そんな女性ばかりじゃない。違うと思いたい。