悶々としすぎた私は次の日、帰宅してきたばかりの沖田くんを下駄箱でつかまえ、寮長が言ったことについてなにか知っているか尋ねてしまった。
「まあ、土方さんはモテるからね。新選組副長って肩書がなかった頃からだもん、生まれつきの色男だよ」
沖田くんは当然のように、さらっと答えた。
新選組が京都で有名になり、当時の上司だった会津藩から給料が出るようになると、それまで新選組隊士に冷たかった島原の遊女たちが、急に優しくなったという。
そうしてモテはじめた隊士とは違い、土方さんは少年時代の奉公先でも、江戸に帰ってきてからも、ずっとモテていたらしい。
まあ、残された写真を見ても、イケメンだなって思うもんね。
沖田くんは片手でスマホを操作し、短いため息をつく。
「日曜はSNSの投稿なし。なにをやっていたか、わからないね」
「そっか、それがあったか」
デートに行った写真がアップされているか確認したのだろう。私はそこまで頭が回らなかった。と言うか、見たくなかったのかもしれない。
「ああいう人を好きになると苦労するよ。やめといたら? 美晴には荷が重いって」
「す、好きっ? えっ?」
スマホからこちらに視線を流す沖田くんの視線が急に大人っぽく見えて、慌てた。私の心を見透かしていると言わんばかりだ。