だから、私たちがケンカでもしてギクシャクしていると思ったのかな。
「そっか。うん。そうならいいんだけど」
尖ったあごを撫でるようにして、寮長はますます声のボリュームを下げた。
「日曜日、土方さんが空き時間にひとりで寮を出ていったんだ」
「えっ?」
日曜日と言えば、つい昨日のことだ。
「心配でこっそりついていったんだけど……寮を出てすぐのところで、知らない女性と待ち合わせをしていたみたいで。ふたりで連れ添って歩いていった」
私は言葉を失った。
女性とふたりで連れ添って……? いったい誰と?
「土方さん、イケメンだからなあ。女性の方が放っておかないよね。でもいつ女性と知りあったんだろう?」
「さあ」
寮母といっても、当然休みはある。昨日、土方さんは休みだった。ちなみに私は炊事当番をしていた。
土方さんがひとりで休みのときは、自分の部屋にいると思っていたけど。
「まさか、前にもひとりで出かけたことがあるんですかね?」
「そうかもしれないね。土方さんにも自由はあるし、ずっと寮にいなくてもいい。ただなにかあると心配だから、いつどこへ行っているか教えておいてくれると助かるんだけどな」