「その女は次期王妃の予定であった! だからこそそんな悪女を許すわけにはいかないのだ! そこをどきたまえ、アランスタイン嬢!」
「どきません! 絶対にどきません! フレデリカ様はそんな安っぽいいじめなんかしません!」
「君も一緒に裁かれたいのか!」
「冷静に考えればわかることです! 庶民なのでしょう、そこの、れ、れ……なんでしたっけ「レーベル嬢よ」そうそれ! レーベル嬢! フレデリカ様がどうこうしなくても、フレデリカ様が公爵様にお伝えしたらそれだけで片付く話ではないですか!」
学校自体は王立だけれども、その管理を一任されているのはリーファライン公爵家。
つまり最高責任者は国王陛下でも、学内のちょっとした面倒ごとくらいであれば理事長である公爵閣下が口を出せば片が付く。
本当にフレデリカ様が陰湿なことをしようとしたら一般生徒よりもさっさとばれるだろうし、きっと娘であっても公爵閣下はそれを許さない。
公明正大に肉を付けたような珍しい高位貴族だとみんな知っているはずだ。
「どうしてそこまでするんだ! 君はフレデリカと親しいわけではないだろう!」
「確かに親しくはないかもしれませんけど、この学校でフレデリカ様にかけていただいた恩は死んでも返しきれないほどあります! だから私はフレデリカ様の見方をするんです!」
「イース様……」
「そうよ、フレデリカ様がそんなこと……」
「そうだわ、わかっていたのに出遅れるなんて」
「フレデリカ様を守らなきゃ」
「イース様だけにさせられないわ」
呆然と見ていたご令嬢たちがそばに寄ってきて私とフレデリカ様の手をとる。
困惑と安堵の表情でフレデリカ様はとうとう泣き出し、遅れて入ってきた大人たちがなにごとかとざわつき始めた。
入り口付近では顔を真っ赤にした公爵閣下がこちらに駆け寄ってこんとする勢いだが周囲が「待って、今は待って」「だめです、今だけは、もう少し待って」と必死に止めていた。