「あ、ふ、フレデリカ様! 私のハンカチで涙は吸いきれましたか!? ちょーっとあの、よく使うものなのであんまりパリッとしてなかったんですけど逆によく涙も吸えたんじゃ……ないかと……」

「う、う、うわあああぁぁん」

「わー! フレデリカ様ー!」


 どうしよう! どうしようフレデリカ様を泣かせてしまった!

 しかも淑女にあるまじき大声での大号泣。どうしようこんなところ見られたら公爵閣下に殺される……と思ったらもう目の前にいた。

 詰んだ。終わった、アランスタイン家。

 固まって公爵を見上げるとすごくすごく悲しそうな顔をした後にいつものキリッとしたお顔でフレデリカ様の手を取った。

 まだわあわあと泣き続けているフレデリカ様の背中をぽんぽんとたたく姿は、昔みたゆきちゃんちのお父さんによく似ていた。


「イース嬢、娘を助けてくれてありがとう。心から、礼を」

「とっ!? とんでもございませんです! むしろあの、フレデリカ様を泣かしてしまいまして……」

「さあ、フレデリカ、一度ここを離れよう、イース嬢にお礼を」

「ぐすっ、イーズざま、ひっく……かばって、くださって……わたくし……わたくし……」

「かばったなんてそんな、えーとえーと、フレデリカ様はそんなことしないって思っただけですから!」


 もうだめだ。キャパシティがオーバーヒート起こしまくっててもうなにがなんだかよくわからなくなってきた。

 そろそろ倒れたいしいっそ気絶したい。目が覚めたら夢でしたってことになっていてほしい。


「ぐずっ、あの、ハンカチは後日お返ししますわ……」

「え、は、はあ……そんなくたくたので、なんかすみません……」
 

 ゆったりとした足取りで出口に向かっていく公爵閣下とフレデリカ様をみつめながら怒涛だったな、終わったなとおもうと足の力がすっかり抜けてしまった。

 その場にへたり込むと周りのご令嬢が手を貸してくれる。

 それを見て慌ててジーク様が駆け寄ってきた。ああ、だめですよそんな、室内でそんな全力疾走したら危ないですよ。