そのまま年を越してしまった。期末試験が終わって試験休みに入ると、自然と毎週水曜日の秘密の時間もなくなり……あの日の校外活動を最後に堕落部の活動はなくなってしまった。一応、彼女と連絡先は交換していたが、メッセージもスタンプひとつすらも送ることが出来なかった。つくづく、自分のヘタレ具合が嫌になる。
 そして二学期が終わった。メリクリメッセージやあけおめメッセージを送ろうかとも考えた。けどこのギクシャクは、100パーセント僕が悪かったし、そんな軽いノリで連絡するなんて出来やしなかった。
 副会長の池上なら造作もなくそういう事ができるのだろうけど、僕のキャラでは不可能だ。

 冬休みの間僕はずっと悶々とし続け、ついに三学期の始業日を迎えた。僕は重い足を引きずるようにして、校門までの道を歩いていた。例の交差点が近づく。ここを右に曲がれば学校だ。
 と、その時。僕は後ろから肩を叩かれた。え? このパターンって……?

「おはよう」

 にっこりと微笑むその顔は、やっぱり綺麗だった。

「方月さん」
「久しぶりだね」
「う、うん……」

 彼女は当たり前のように僕に接してくる、去年の試験前のことなど、なかったかのように……。

「行こう? 早くしないと門がしまっちゃう」

 二人は横に並んで歩道を歩き始めた。

「休み中は何してた?」
「別に。特に何も……」
「そうなんだ……私はさ、ちゃんと活動してたよ?」
「え?」

 活動って……もしかして。

「毎週水曜日は"堕落"するって決めたから。深夜ラーメン、またやっちゃった!」

 方月さんの声は誇らしげだった。

「ははっ……そうだったんだ」
「でもさ、やっぱりなんか違うんだよね。確かにスリルはあったよ? あったけど、それだけっていうか……師匠に色々教えてもらってたときの方が楽しかったんだよね」

 そう言って、方月さんは恥ずかしそうに頬を掻く仕草をした。

「というわけで、今年も堕落部の活動、よろしくお願いします」

 彼女はペコリと頭を下げる。

「えっと……それって……また、生徒会室行ってもいいの?」
「何言ってるの? 当たり前でしょ?」

 あっけらかんと答える。本当に何でもないかのようだった。悩んでいたのは僕だけ……だったのか?

「どうしたの? もしかして、嫌かな?」
「うっ! ううん! 全然。全然嫌じゃない!!」

 僕は慌てて、首と手を降って否定の意思を表した。

「そっかぁ、よかった」

 方月さんは安堵のため息をつく。その表情を見て、心臓が一際強く脈打ったような感覚があった。

「それじゃあ、明後日から早速お願いします。ちょっとさ、相談に乗ってほしいこともあるし……」
「相談?」

 僕の頭の中に疑問符が浮かんだ。