だんだんとネガティブに身体を潰され、机に突っ伏す。木のひんやりとした感触が頬をくすぐる。頭上で薫が「あ、忘れてた」と声を漏らすが頭を持ち上げる気力がない。

「図書室に本返してくるから。ちょっと待ってて」
「あー」

 声にならない声をあげると、九十度傾いた視界の中で薫が歩き去る後ろ姿を見送った。口を半開きにしていたせいで涎が垂れそうになり、寸前のところで顔を上げ、慌てて涎をすすり左手の袖で口元を拭う。

 あぁ、こういうだらしないところもダメだよなぁ。

 袖によだれが付いていないことを確認し、少しめくると、そこには古びた腕時計が巻かれている。
 学校の帰り道に寄った雑貨店で買った安物だ。店主曰く、貴重で希少な、願いを叶える腕時計らしい。
 スマートフォンの画面には以前、恋のキューピットが弓矢を持って羽ばたいている。
 占いとか、魔法とか、馬鹿らしいと思っている。だけど、仕方ないじゃないか。そうしなければ私は。 
 私は時計をそっと撫でて、つぶやく。

「恋のキューピットでも、いてくれたらな」

 すると、突然。
 時計は強く光出した。