ロケットランチャーが火を吹き、智恵子ちゃんはそのまま連続でミサイルを装填し撃ち続ける。爆煙をあげる部活棟の屋上の中で高梨会長はそれを交わし、時折飛んでくるミサイルを狙撃し、空中でミサイルが爆発する。
「誰かを特別に慕うにはそれなりの理由があるはずでしょ。私、あなたと話したことあったかしら」
「覚えていなくても仕方ありません。あれは私がまだ中学生の頃の話ですから」
 特別な思い出があるのだろう。過去を思い出している智恵子ちゃんの顔は明らかに照れていた。それは恋する乙女の表情だ。
「今では大大大好きです!」
「それは勘違いよ。同性の先輩への憧れを、好意だと錯覚しているだけ。思春期によくある勘違いよ」
 高梨会長は冷徹な声で突き放す。しかし、拒絶というニュアンスではなく、むしろ優しさを感じた。恋愛がわからないという孤独を感じている高梨会長だからできる優しさの表現だと思う。智恵子ちゃんがどう感じているかわからないが、同性に恋をするというのも、今の社会ではそれなりに孤独を感じるものだろう。
「確かに最初は憧れでした。会長の言う通り、勘違いかもしれないって、過去には自分の思いがわからないこともありました。でも、今の私のことならわかります。私は会長のことが好きです!」
 それは奇しくも、恋愛についてわからないと言っていた高梨会長と同じセリフだった。
 「智恵子ちゃんはどうして憧れじゃなくて好きだって言い切れるの?」
 私の木原先輩に対する思いも憧れが強いから。
「どうして。どうしてかぁ」
 智恵子ちゃんがロケットランチャーを撃つ手を止め、考え始めると高梨会長の銃弾が智恵子ちゃんの心臓を貫く。智恵子ちゃんは着弾の衝撃で後方によろめくが倒れることなく、首をだらんと下げその場に力なく立ち尽くす。
「智恵子ちゃん!」
 スマートフォンの向こうから笑い声が聞こえてくる。
「さぁ、そのミサイルで田中さんを撃ちなさい」
 智恵子ちゃんはロケットランチャーにミサイルを装填し、肩に担ぐ。その銃口は私ではなく、高梨会長のいる外に向かっていた。
「ほら。やっぱり私、会長のこと好きみたいです」
 顔を上げた智恵子ちゃんの顔は変わらずキラキラとしていた。
 そうだ。撃たれた相手は撃った相手のことを好きになるのが銃の効果。ならばもともと高梨会長を好きな智恵子ちゃんが撃たれても変化がなくて当然だ。