立ち上がり、窓の外に向けて拳銃を向けるがそこには誰もいなかった。
隣の教室に繋がるベランダの下は来客用の駐車場があり、その向こうには全ての運動部の部室が揃う部活棟があるのみ。
「どこ……」
ベランダのどこかに隠れているのか。ベランダへ出ようと窓へ近づくと、傾き始めた太陽の陽が何かに反射するのが見えた。
キランと光るそれは、部活棟の屋上。そこには何か影が。目を凝らし、その影が人だと認識した瞬間、目の前の窓ガラスが弾けた。
高梨会長の銃弾は窓の桟に命中し、わずかに私の袖をかすめて後方の壁へと着弾。
ガラスが床に散らばる激しい音と袖を狙撃された衝撃で私は身動きが取れなくなるが、辛うじて後ずさりした足が床に転がった人体模型に躓いて転び、私はすぐに窓の下の死角へと隠れた。
「そんな遠くから、やっぱり卑怯じゃないですか!」
「あなたたちこそ卑怯じゃない」
高梨会長からの予想外の言葉に返す言葉が見つからない。あなたたちこそって? それよりも先輩の声だ。
いつも私たちの前で生徒会長として話す品のある凛とした声でもなく、先ほどの冷たいものでもない。
失礼な言い方だが私とよく似た、普通の女の子のような声だった。
「私は容姿が人より整っている。ママのおかげよ。ママもとても綺麗だから。だけど運動が全くできなかった。だから頑張った。そしたらみんなパパのおかげだねっていうの。パパは運動神経がいいからね」
「それは、辛いですね……」
自分の頑張りを誰かのおかげと言われるのは腹立たしいし、やるせないだろう。完璧だと思っていた高梨会長がまさかそんな思いをしていたなんて。
「別にいいの。パパが私を誇りに思ってくれるなら私も嬉しいから」
いいのかよ。
「じゃあ……」
「私は勝手に期待される。この見た目にあった中身を求められる。だからそれに答えるように努力した。勉強もしたし、誰に対しても優しく接したし、みんなが求める高梨マーガレットを完璧に演じてきた」
そうか。私もさっきから高梨会長を勝手に完璧な人として捉えていた。植村さんと同じように演じていたなんて、それはやっぱり。
「辛かったんですね」
「それも別にいいの。私も今の私に満足してるから」
いいのかよ。
「何が言いたいんですか?」
スマートフォンの向こうから少しだけ息を吐く音が聞き漏れた。
「私は、私が大好きだ。なのに……嫌いになりそうだ」
隣の教室に繋がるベランダの下は来客用の駐車場があり、その向こうには全ての運動部の部室が揃う部活棟があるのみ。
「どこ……」
ベランダのどこかに隠れているのか。ベランダへ出ようと窓へ近づくと、傾き始めた太陽の陽が何かに反射するのが見えた。
キランと光るそれは、部活棟の屋上。そこには何か影が。目を凝らし、その影が人だと認識した瞬間、目の前の窓ガラスが弾けた。
高梨会長の銃弾は窓の桟に命中し、わずかに私の袖をかすめて後方の壁へと着弾。
ガラスが床に散らばる激しい音と袖を狙撃された衝撃で私は身動きが取れなくなるが、辛うじて後ずさりした足が床に転がった人体模型に躓いて転び、私はすぐに窓の下の死角へと隠れた。
「そんな遠くから、やっぱり卑怯じゃないですか!」
「あなたたちこそ卑怯じゃない」
高梨会長からの予想外の言葉に返す言葉が見つからない。あなたたちこそって? それよりも先輩の声だ。
いつも私たちの前で生徒会長として話す品のある凛とした声でもなく、先ほどの冷たいものでもない。
失礼な言い方だが私とよく似た、普通の女の子のような声だった。
「私は容姿が人より整っている。ママのおかげよ。ママもとても綺麗だから。だけど運動が全くできなかった。だから頑張った。そしたらみんなパパのおかげだねっていうの。パパは運動神経がいいからね」
「それは、辛いですね……」
自分の頑張りを誰かのおかげと言われるのは腹立たしいし、やるせないだろう。完璧だと思っていた高梨会長がまさかそんな思いをしていたなんて。
「別にいいの。パパが私を誇りに思ってくれるなら私も嬉しいから」
いいのかよ。
「じゃあ……」
「私は勝手に期待される。この見た目にあった中身を求められる。だからそれに答えるように努力した。勉強もしたし、誰に対しても優しく接したし、みんなが求める高梨マーガレットを完璧に演じてきた」
そうか。私もさっきから高梨会長を勝手に完璧な人として捉えていた。植村さんと同じように演じていたなんて、それはやっぱり。
「辛かったんですね」
「それも別にいいの。私も今の私に満足してるから」
いいのかよ。
「何が言いたいんですか?」
スマートフォンの向こうから少しだけ息を吐く音が聞き漏れた。
「私は、私が大好きだ。なのに……嫌いになりそうだ」